秋田県秋田市(穂積志市長)が生活保護の「障害者加算」を誤って過大に支給し、対象者に過支給分の返還を求めている問題で、秋田市は27日、返還を求めないよう要請していた民間団体「秋田生活と健康を守る会」(後藤和夫会長)に対して「返還を求めていく」と文書で回答した。秋田市に対しては、これまで民間団体が返還を求めないよう要請していたほか、弁護士の団体である自由法曹団秋田県支部(虻川高範支部長)も過支給分の返還請求をしないよう申し入れていた。秋田市はこれら当事者側の声を、一切退けたことになる。後藤会長は「当該世帯の苦しい実態を訴えたにもかかわらず、このような回答はあり得ない」と話している。
秋田市は1995年から28年にわたり、生活保護の「障害者加算」を過大に支給。精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)の2級以上をもつ少なくとも38世帯に対し、過去5年分の過支給額を返還するよう求めている。返還対象額は、最も多い世帯で140万円に上るとみられる。
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「秋田生活と健康を守る会」は今月4日、秋田市福祉事務所を訪れ、返還を求めないよう市側に要請していた。また当事者向けの相談会を開くなどし、返還を求められた人のうち把握できた世帯を支援してきた。
守る会の後藤会長は「誤って支給されたかたがたには何の責任もなく、最低生活費を割ってまで返還を求めるべきではないとこれまで訴えてきた。弁護士団体も説得力のある訴えを秋田市側にしてきた。それがなぜ、このような回答になるのか」と憤る。
全国公的扶助研究会会長で花園大学社会福祉学部教授(公的扶助論)の吉永純さんは「保護利用者はまじめに収入を申告して義務を果たしており、支給されている保護費が正当な保護費と信頼して生活を組み立ててきている。今回の過支給は100%市のミスである。にもかかわらずわずかな最低生活費からの返還を求めるというのは、市のミスを棚に上げて保護利用者の最低生活を犠牲にして穴埋めするようなものであり、利用者の最低限度の生活を保障する義務がある市のやることではない。道理がまったくない」とコメントを寄せた。